おいていかないで
「お客様を置いていかないよう心がけてます。」
講談師 神田松之丞の言葉です。
講談とは、講談師が高座におかれた小さな机(釈台)の前に座り、
小さなハリセンみたいなもの(張り扇)で釈台を
バチン、バチンと叩きながら、
軍記物や政談など主に歴史にちなんだ読み物を、
観衆に対して読み上げる伝統芸能です。
最近、その講談がちょっとしたブームなのはご存知ですか?
ひところは、全国でも講談師は殆どいなくなってしまい
、絶滅寸前、じり貧状態だった講談が、
最近は講談師の数が100人近くまで
盛り返したとのこと。
そのブームの立役者が神田松之丞です。
先日、その神田講談師がテレビに出ておりました。
「寄席にお客様が来ていただくために、工夫していることは」
という司会者の問いに対しての答えが冒頭の言葉です。
だから難しい言葉や表現を使わず、
お客様が置いて行かれないようにしています。」
講談のムズカシさを知ってもらう為に、
講談師が一番最初に覚えるという
『三方ヶ原軍記』の出だし部分を
以下に書き出してみます。
「そもそも三方ヶ原の戦いは、頃は元亀(げんき)三年壬申年(みずのえさるどし)、
十月の十四日、甲陽の太守、武田大僧正信玄、
甲府において七重(ななえ)の均(なら)しを整え…
『にっくき武田勢がふるまいかな、片時も捨て置き難し』とやぐらを下らせ給い、
にわかに諸将を召して、『出陣の用意、用意』とおうせたもう…」
どうですか?
はっきり言って、文字にしても分かりづらく、
初めて講談を聞く人が
これを耳だけで聞いて理解、というのは
まずムリだと思ってしまいませんか?
もちろん、通い詰めることによって、
知識が増え耳が鍛えられ、徐々に理解を深める、ということも
伝統芸能を味わう妙味とも言えるのですが、
忙しい現代人でそこまでして講談を理解したい、
という人が何人いるのやらです。
神田講談師はとにかく、初めての人でも
分かりやすく、
「観客を置いて行かないこと」
を意識することにより
人気を博しているのです。
置いて行かれてしまった人が、
覚える気持ちは
「さびしさ」
と
「孤独」
です。
人生の中では置いて行かれることによって、
「奮起しました」という局面もたしかにありますが、
恋愛や婚活において
大切な人をおいていってはいけません。
おこがましいのですが、
私どもも、文章やブログを書く際や
カウンセリングの際に意識するのが、
とにかく「わかりやすさ(読みやすさ)」
です。
専門用語はなるべく使わず、
どなたが読んでも理解いただける文章を
心がけております。
そしてこのブログをご覧になられたあなたに、少しでも希望や励みになれば、
という思いを持って書かせていただいております。
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